冷酷な彼は孤独な獣医
すると、美紀さんは下を向いたまま、

静かに話し始める。


「あたし……ずっと高我に暴力振るわれていて……」


そう言って、美紀さんはゆっくりと顔を上げる。


「えっ!!それ……」


あたしは、美紀さんの顔を見て驚いた。


美紀さんの綺麗な顔は、

信じられないくらい腫れ上がっていて、

目の周りは紫色になり、口の脇は切れていた。


「昨日、高我に見つかって……

それで……家に連れ戻されて……殴られて。


今日の朝、高我が眠っている隙に家から出たんだけど、

何処に行っても高我に見つかる気がして、

駅のトイレにずっと閉じこもっていたんだけど……

やっぱり龍に頼ってしまって……


龍には、あなたがいるってわかっているのに……ごめんなさい」


頭を下げる美紀さんをあたしは抱きしめた。

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