冷酷な彼は孤独な獣医
「いいよ美紀さん!いいから……」


あたしは、美紀さんを抱きしめながら泣いていた。


美紀さんがかわいそうで仕方がなかった。


あんなに綺麗な顔を、こんなになるまで殴られて、

今まで何度も何度も殴られてきて……

きっと、龍の兄に殴られる度に、

美紀さんは後悔したんだ……


龍を裏切った事を。





「やさしいね……」


美紀さんは消えそうな声でそう言うと、

あたしの胸に顔を埋める。


美紀さんの白くて細い腕がか弱くて、

それなのにそんな腕すらもアザだらけで……


それに、初めて触れたその体は、

思っていたよりもずっと細くて小さくて、

こんな体であんな暴力に耐えていたのかと思うと、

胸が苦しくて……痛い。



「やさしくなんかない……

あたし、美紀さんの事なにも知らないで……

美紀さんの事、嫌だなって思ってて……

なんで龍に頼るのって……思ってて……


本当、ごめん……こんな辛い思いしていたのにあたし……」


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