LOVE・ホテルに行こう。
アイスコーヒーを注文して2人して沈黙。


フ~。


軽く息を吐く。


「…電話、待ってたんですけど」


重い雰囲気の中、田村君の声でハッとなる。


「…ごめん」


「それと…これは受け取れません」


一万円札をテーブルに出した。
私があの日メモと一緒に置いた一万円札。


「…これは…田村君が受け取って」


「俺は忘れませんから」


「…」


「だから受け取れません」


真っ直ぐ私を見る田村君。


私が書いたメモの事を言ってる事はわかった。


《先、帰るね。昨日の事は忘れて。》


殴り書きで書いたメモ。


「…ごめん。…あの日の事は忘れてほしい。
酔っててよく覚えてないし。…ホント、忘れて」


絞り出した声で田村君にお願いした。


「…木崎さんは…簡単に忘れられる程の事だったんですか?」


「…ごめん」


「さっきから謝ってばっかりですね」


怒ってる?
田村君の低い声。


「…だって…私が馬鹿な事したから。自分でも後悔してる。田村君、巻き込んで」


「…後悔してるんだ。木崎さんから誘ったのは覚えてるんですね?酔ってたのに」


突き放すような意地悪な言い方。








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