LOVE・ホテルに行こう。
隣にいる田村君に話し掛ける。


夜って不思議だ。
昼間言えない事や恥ずかしい事も言える魔力がある。それに飲み込まれた私が口を開く。


「圭吾。…こんな事聞いていいかわからないけど…奈美ちゃんの事、わかってる?」


奈美ちゃんが田村君の事好きだって事。


「…それって、俺に気があるって知ってるっかって事?」


「そう。わかってるならいいけど。」


「美久と付き合う前に告白されたけど俺の気持ちは伝えたから。彼女もわかってるよ、俺の気持ち」


「言い方悪いかもしれないけど圭吾に言い寄ってるって彼女、噂がたってるし。私が言う事じゃないけど圭吾もキッパリ言った方が彼女の為だと思うんだ。彼女、物凄く圭吾の事好きなんだと思うけど…今は私が彼女だってみんなは思ってるから。奈美ちゃんが悪者になってる感じだし。私の言いたい事わかるかな?」


「吉川さんの事思って美久が言ってくれてるって事はわかった。
…だけど彼女、俺と同じだから。
好きな人に振り向いて欲しいって。
行動は違うとしても一緒だから俺と。
気持ちがわかる分言えないなって。だから、俺の気持ちが揺るがないもんだって吉川さんが気付けばわかってくれると思う。…ごめん、美久に気を使わせて」


優しいね、田村君。
優しすぎるから奈美ちゃんも心のブレーキが効かないんだと思うよ。


その優しさは時に罪になるのわかってないね。


「圭吾がわかってるならいいの。もう、この事は言わないから。…疲れちゃったね、もう寝るね。おやすみ」


「うん。おやすみ」


背中に田村君の温もりを感じて目を閉じた。




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