LOVE・ホテルに行こう。
田村君が言う通り久しぶりの会話だった。
久しぶりって言っても4日ぶりだけど。


田村君がレジを終わらせ待っていた私の隣に来た。


「何にしたの?」


「木崎さんと同じ物です」


「そう」


「リアクション、うすっ。
『えー、嬉しいな。同じもの?』とか言って下さいよ」


「別に嬉しくないし。嘘は付けない」


「疲れてます?残業ばっかですもんね」


「田村君は元気だね。若いから?」


さっきから私、可愛いげない言葉ばっかり言ってる。


エレベーターが開き乗り込んだ。


乗り込んでから無言の田村君。
壁にもたれ私を見てるのが視線でわかる。
私も口を開く事なく立っていた。


近付いて来る気配がして横を見た。


後ろから軽く抱き締められる。


「ちょっ、やめてよ。ここ会社だよ、離して」


田村君の腕を取り離そうとした。
だけどさらに強く抱き締めて来る。


「離してっ」


「…俺が元気なのは…美久と話しが出来たから」


「…」


「ったく、そんな事もわからないんですか?
木崎さん」


「イッツッッ」


腕を離したと思ったら私の頬を軽くつまんだ。
開いたエレベーターからさっさと降りて行ってしまった田村君の後ろ姿。


何なのよっ。
動揺してる胸を押さえた。


ドキドキしてる胸。
もう~、何なのよっ。


おっと。
締まるエレベーターに正気になる。


ここは会社。
仕事第一。


智子が待ってるから急がないと。
気持ちを沈めて足早に席に戻った。







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