LOVE・ホテルに行こう。
海が見たいねと圭吾が言い水族館の裏通りの道を歩き堤防まで歩いて来た。


「泳げないんだね」


看板には遊泳禁止の文字が書いてある。


「水深が深いのかもね。俺の田舎の海は浅瀬で夏は海水浴に行くのが日課だった」


「海で泳げるんだ。私は駄目だな。
足がつかないと不安で塩水も苦手」


「そっかー」


フフフと笑いだした圭吾。


「気持ち悪いな、急に笑って」


「想像しちゃった。美久の水着姿」


「バカッ」


バシッと圭吾の肩を叩いた。


「男は色々と想像する生き物なの。しょうがないじゃん、こればっかりは」


「ホント、バカッ」


アハハと笑ってる圭吾を無視して海を眺める。
遠くに船が見えた。
水面は太陽の光でキラキラしてる。


う~んと腕を上げて背伸びする。
隣で圭吾も真似して背伸びした。


「癒されたし、帰ろっか?」


電車に乗り、我が街に戻ってきた。
緑色が少ない海の薫りもしない人とビルの街。
だけど見慣れた街並みは心をホッとさせる。


今日はマンションに帰ると圭吾に告げていた。
最寄りの駅で降りマンションに帰る。
いつも通り、いいよって言ったのに送ると引かない圭吾と2人で。


「お茶飲んでく?」


マンションの前で圭吾に聞いた。


「う~ん、やめとこうかな。部屋入ったら美久、抱き締めてしまいそうだから。今日は想像で我慢する」


「何、言ってんだか。バカに付ける薬が売ってたら買っとく」


「高くて買えないかも」


「はい、はい。さようなら。
今日はありがとう、楽しかった。じゃぁ、私、行くね」


「美久、ちょっと待って」


バッグに手を入れ何か探してる。


「いいって言ったけど…これ、貰ってくれる?」


差し出したのはさっきの水族館のロゴが入った袋。


「イルカの入った…何だっけ?ガラスのやつ」


「スノードーム?」


「そう、それ。綺麗だったから、美久に」


「わざわざ買ってくれてたの?」


「こっそりね。今日の記念にと思って」


「ありがとう。大事にする」


圭吾に手を振り別れる。


圭吾がくれたプレゼント、嬉しかった。
だけど見る度に今日の事を思い出すのが辛いな。


楽しかったから。
圭吾と笑ってはしゃいで手を繋いで。
手の温かさを忘れられなくなりそうで。




< 74 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop