LOVE・ホテルに行こう。
「美久、ごめん。ごめん。だから泣かないで」


私を抱き寄せ謝る圭吾。


わかってた、こうなること。


困った顔した圭吾がごめんって言って私は失恋するの。失恋して泣いてやけ酒して智子にも付き合ってもらってはしご酒するの。


だけど恥かいて失恋しても前に進めるからいい。春人の時には出来なかったスガル事。
スガって恥かいて失恋して後は忘れるだけ。


圭吾が言った『ごめん』で冷静になっていく。


圭吾は初めから好きな人がいるって言ってたもんね。勝手に好きになった私がとやかく言う事じゃないよね。言いたいこと言ったら気持ちが落ち着いてくる。


さっきの圭吾みたいにふぅ~と深呼吸する。


圭吾から体を離す。
ティッシュで涙を拭いて、鼻水拭いて。







苦しい、凄く、すごーく。
息苦しい。


圭吾に抱き締められて…。


「…くる‥し‥ぃ、けぃ‥ご」


圭吾の背中を叩き抗議した。


ハァー、ハァー。
大きく息を吸う。


殺す気?困らせたから嫌がらせする気?


「…美久…俺の事‥好きなの?」


圭吾、話聞いてた?
あれだけ女々しくスガッタのにそれ聞く?


「残念だけど圭吾の事が好き。圭吾、好きな人とうまくいくといいね。応援はしないけど」


立ち上がり


「失恋した私は帰るよ。
圭吾の事は忘れるから心配しないでいいよ。
バイバイっ。
あっ、私の私物は後日取りに来るからまとめといて。圭吾が嫌だったら着払いで送ってもいいよ。住所、メモに書いておく」


バッグを取り中からスケジュール帳を出す。
殴り書きで書いたメモをバシッとテーブルに置いた。


「美久は俺の話、聞いてくれないの?」


黙って私の行動を見てた圭吾が静かに口を開いた。


「自分だけ言いたい事言って、俺の心は置き去りにして帰るの?」


「何?何よ、置き去りって。圭吾、ナルちゃんみたい。もしかしてナルシスト?」


無理してでも冗談を言う。
辛うじて保っている心。
いつ、また泣き出すか自分でもわからない。


「美久がそう言えばそうなのかも。
美久がずるいって言ったらそうなのかも。
美久が馬鹿って言ったらそうなのかも。
美久が笑えば俺も笑うし
美久が泣けば俺も泣きたくなる。
美久は俺の全てで
近くに居ても俺の事見てないのがわかってたから言えなかった」




< 78 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop