短編集‥*.°
…なんで、あんなことを言ったの?
『あんたはアタシとは吊り合わない』
校門の前でナツを待っていたら、
言われた。
そのままナツは、
わたしを置いて帰って。
しばらく、呆然としていた。
――時間が経って、
言葉の意味を理解したわたしは憤った。
そんな時。
数学のノートを教室に忘れた、
ということを思い出したのは。
もっと苛立って、
気になって仕方がなくて。
…ホント、わからない。
“ 幼なじみ ”というナツとの絆が、
一気に崩れ落ちたような、
そんな気がした。
頬杖をついて、窓の外を見る。
相変わらず、空は鬱々と曇っている。
…あーあ。
雲みたいにもやもやして、何か、こう…
シックリこなくて。
ナツって、もっと、
優しかったと思うんだけどな。
必要以上に人に気を使ったり、自分の
言った言葉で他人が傷ついていないか、
心配したり。
…繊細で、
これ以上ないくらい優しかった。
なのに…。
キーンコーン、チャイムが耳に届く。
一限目は、数学だっけか…。
担当が入ってきたけど、
ノートを開く気にもなれず、
机に突っ伏し目を閉じた。