短編集‥*.°


疲れ切った身体を休めることもせず、おぼつかない足取りで少女は歩いた。

少しだけ草の生い茂った茂み、さっきまで少年の姿が見えていた、彼の声が聞こえていた、その場所へ。


「…なんで…」


そこには。


少年の姿はおろか、女性の寝転んだ跡さえなかった。

誰かがいた形跡さえ残っていなかった。


幻を見ていたのだと、理解する。


「う…あぁ、あ…!」


少女は、声を上げて泣いた。


愛されたい。

少年を好きになった時から、ずっと、望んでいた。


それを、自らの作り出した幻覚によって叶わないものへとしたのだ。

誰も、責められない。


森に光が差す。

冷たく鋭い月光とは違う、暖かく柔らかな陽の光。


「あぁ…!」


森にはいつまでも少女の泣き声が響き、
森の中に木霊していた。





ー欲深き 朧夜に咲く 月ノ花


            —完結—

ダークテイストのファンタジーです。
授業中(おい)、ふと構想が浮かび、
ノートに書いた物語だったり。
短編の中では、結構お気に入りです。

趣味度は、高いなー。
んー…92%かな?笑

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