短編集‥*.°
…ん…?
…真っ暗な視界が
段々 明るくなっていく…。
けれど…やっぱり暗い…?
私は
ゆっくりと目を開けた。
「…ん…。えっ?」
目に映る赤と
私を覗き込む整った顔——
「なんで、
そんなとこで寝てんの?
そこ、俺の特等席」
真っ黒い髪…焦げ茶の瞳。
学校指定の、
紺色の鞄を肩に提げてる。
白と青の体操服を着てるから…
部活帰りなのだろうか。
…この人を見た瞬間、
身体にドキリと衝撃が走った。
なんというか…驚いた。
「え?あの…特等席って…」
そう呟くと、
その人は呆れ顔で
「そのまんまの意味」
え、あ…はい。
とりあえず素直に立ち上がり、
深い紺色の制服を整える。
「は〜…
やっと眠れんな」
その人は、
生徒鞄を肩からおろすと、
今まで私が寝ていた所に寝転んだ。
右手で顔を隠し、
その人はダランとした口調で言う。
「もう夕方だぞ…。
一年はもう帰れよ…。
危ねえぞ…」
「…あ、はい」
えっ…もう夕方なの?
…慌てて真上を見ると…
真っ赤な空が見えた。
…さっき、
起きた瞬間に、この先輩らしい人と共に
視界に入った空。
…赤。