短編集‥*.°



…空は美しい赤に染まって、
私が寝る前までは灰色だったなんて…
嘘みたい。



ここは、学校一高い場所…
屋上よりも。


空に近くて、遠くには、
沈んでいく夕陽が見えて…
浮かぶ白い月もぼんやりと見えた。



空って、こんな色にも染まるんだ…
こんな夕焼けを、こんな高い所から、
見た事がなかった。



いつの間にか、
先輩らしい人が立ち上がって、
私と同じ方向を見ていた。



「はぁ…さっさと帰れよな。
 綺麗だろ?たまにこうなるから、
 俺はここが好きなんだ」



「…そうなんです、か」



夕陽に照らされて、
その人の顔が赤くなってる。



きっと、私の顔も。



そう、きっとこれは、
夕陽のせいなんだ…顔が熱いのは。



「あ〜、敬語いらねえから」



「…えっ?」



「よく俺も先輩に使ってたけどよ…。
 実際に後輩に使われると、なんか、
 かしこまってる感じがして
 こっちが疲れる」



…え、敬語…
使っちゃいけない…の?



嘘、先輩にタメ口なんて無理…
なんて、思ったけど。



「解りました…。
 じゃあ、タメ口で…」



「すでに敬語」



「あ、本当だ…。
 …また、ここに来て良い?
 その、私も気に入っちゃって…」



「んあ?…別に良いぜ。
 俺にとっても
 お気に入りの場所ってだけだし」



普通に話せてる私が居た。



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