短編集‥*.°
そんな事がフッと頭に浮かんだけど、
実際は、悪口を言った覚えがない。
ルリはアタシのもう一人の親友で、
ミクってのはサエカのもう一人の親友。
ルリとはそんな話、した事ない。
ルリ自体、アタシ自体、
悪口っていう行為は嫌いだから。
「言ってないけど。アタシとルリの性格
知ってるでしょ?」
「知ってるけど、
ミクに言われたんだもん」
ああもう。
アタシが言いたい事が、
分かんないのかな。
ポケットから、
校則違反の飴玉を取り出し、口の中に
放り込んでから、サエカに言う。
「…あのさ…。はっきり言ってよ。
もしもアタシとルリが、サエカの
悪口言ってたとして」
まぁ、そんな事はないけど。
「…アタシに何か
言ってもらいたいの?」
ごめんね?それとも。
――言う訳ない、
アタシ達は親友でしょ、とでも?
…ごめんね、アタシは
そう言う事が言えないから。
「えっ、い、いや、もし悪口を
言ってるならやめてほしくて…」
「別に言ってないよ。アタシとルリは」
口の中に広がる複雑な味。
――おえ、こんなお洒落な味、
アタシには合わない。
袋を見る。
…まさかの『途中で味が変わる!
紅茶味から珈琲味に!』。
サエカなら合うかも。
いっつもお洒落に気を使ってるから。