短編集‥*.°
ある言葉を思いついた。
これがあの、俗に言う
『複雑な人間関係』って奴なのかも
知れないな。
アタシの嫌いな複雑。
…いくらでも簡単にできるものでも
あるんだけど。
例えば、
アタシがサエカじゃなくルリを選べば、
サエカはミクと一緒になるだろう。
ルリだけじゃなく、
アタシもサエカに嫌われるだけで。
アタシがサエカを選んだ場合は、
ミクって人が嫉妬の眼差しをアタシに
向けるだけ。
特に複雑でもないけど、
複雑なんだから。
…あーもー、こんがらがってきた。
不味い。
昼間の飴玉みたい。
シンプルな方が好きって言ってるのに。
――不意に星空を見上げると、
一つ一つがただ明るく、光ってた。
喧嘩をする事はもちろん、
ギクシャクするまでもなく。
良いな…なーんて、馬鹿げた事を
一瞬でも考えた自分に笑えてくる。
…まー、本心なんだろうけどさ。
「あの飴玉、不味かったなぁ…」
なんかあの飴玉を思い出すと、
甘い物が恋しくなった。
なんとなく。
…なんとなく、アタシは。
――星空に手を伸ばした。
その刹那、だった。
…手の平に固い感触。
コロンと何かが、
ベランダの床に落ちた気がした。