短編集‥*.°



柔らかな風が吹く…決して
私の心を流してくれる事はないけれど。


花が揺れる。


私はこれでも、
花には詳しい方だったりする。


この中庭に咲いているのは、
ベゴニアや、ユリオプスデージー、
ハルシオンとか、スミレとか。


結局、疎ましい。


小学校の時は、
花の事が大好きだったのになあ…。


花が好きだから、
栽培委員会に入ったりして、さ。


中庭の、教室からは見えない所に
移動する。


端っこの花壇に咲くガーベラも、
見てて鬱陶しい。


チッと舌打ちを…してしまう。


包帯が少し赤く染まったのに
気づいた時、だった。


「なんでそんな事した?」


声が聞こえたのは。


周りにキョロキョロと目を配る。


誰もいない。


…なら、今の声は誰?


空耳?…ついに、精神が
おかしくなったのかな…ストレスで。


…なんだったんだろ、と
呟きそうになって、また、聞こえた。


「ねえ、なんでそんな事した?」


「…えっ?」


慌てて周りを見る、
だけれども誰もいない…。


「…僕だよ、僕。
 目の前に居るだろう?」


は?目の前?


目の前にあるのは、
ガーベラと花壇…だけ。


「ほら、僕だよ」


また、声…そう言ったのは、
まるで雪のように白い、ガーベラ、
だった。


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