短編集‥*.°


ガーベラの白が、目に付く。


軽く目を逸らしてから、
話を続ける。


「で、さ…。まあ、イジメられて。
 例えば『死ね』って皆に言われたり、
 物投げられたり。

 それにいちいち反応するから
 私の反応が面白いのかも。

 弱いよね私」


空を見ると、ガーベラみたいな
白い雲が浮かんでいる。


青い空。


鳥。


あーあ、
良いなあ、幸せそうで、さ。


幸せな人のために花は咲くんだしさ。


「ふーん…。弱くはないと思うよ。
 普通はそんな事、中々 言えないから」


慰め?だとしたら、
そんな物なんていらない、
そう言いそうになる。


でもガーベラの口調からは、同情とか、
そんな気持ちは感じ取れない。


むしろ、話を聞いているだけ、
みたいな。


「…それから、逃げたいの?君は」


「…うん」


躊躇いはない、ゆっくりと頷く。


三限目のチャイムがなる前の、
私しかいない中庭。


喋るガーベラが居るけれど。


「ふーん…。やっぱり、
 人間の世界は大変なんだね。
 僕らの世界は、オンリーワン。

 全てが全て、
 別の個性だと理解しているから」


…良いなあ。


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