短編集‥*.°
しばらく時間が経った。
他愛ないお喋りをしても、
チャイムは鳴る事がなかった。
「僕の友達?そりゃあ、居るよ。
例えば、すぐそこのスミレの…」
フと気になった質問をしてみる…
この、白いガーベラに。
ガーベラの話に、口を挟んで。
「あとは、そのハルシ…」
「ねえ」
ピタリと話が止まって、ガーベラが
私の話に耳を向ける仕草をした。
まあ、要するに、
少しだけ私の方に傾いた。
はあ…なんて静かなのか。
「なんで、あんたは私に話しかけたの?
私みたいな不幸人より、幸せな人と
話す方が、楽しいでしょ?
聞いたことあるし。花って、
幸せな人のために咲くって」
ん、とガーベラは唸ったあと、
静かに優しく言ってくれた。
私だけの空間…否、喋るガーベラと、
花たちと。
「何を言ってるの?そこら中に居る、
皆に聞いてみなよ。
誰のために花は咲く?ってね。
きっと、同じ答えが返ってくる」
「どんな答え?」
ふふっ、と声は出さないけれど、
ガーベラと、そして。
中庭の花たちが暖かく、
はにかんだように笑った。
「君のために花は咲く、ってね」