短編集‥*.°
よく晴れた、青空がパッと広がる日。
一月十五日。
美代は黄色い振り袖を着て、ゲタをカラコロと鳴らし、団子状に巻いた髪に、青いカンザシを刺し――
その日を、中学時代の旧友と過ごした。
夜には酒が入り、旧友たちは大騒ぎだ。
美代は元来、酒をあまり飲まないが、この日ばかりは別だった。
酒の席はすでに喧騒に包まれており、美味そうな匂いが会場を満たしていた事も、理由かもしれない。
すでに酒瓶 二本を飲み干した美代は、軽い頭痛に襲われた。
頭痛は、五月蝿い声と共鳴するかのように、酷くなっていく。
暑い熱気にも疲れていた美代は、いったん外に出る事に決めた。
黄色い振り袖を振り、ゲタを鳴らし、髪に刺さったカンザシを整える。
出口が、遠く感じた。
***
月の綺麗な夜だった。
頬に冷たい風が当たる度、その流れに身を任せそうになる。
空の所々に、小さな雲の塊が浮かび、月の光を遮っては、また、地上と月の間から退いた。
さっきまでの騒がしさは、嘘のように消え、田舎町の事、辺りはほんのりと薄暗い。
酔いが、ゆっくりと醒めていく。
頭痛は引き、美代は月を見上げていた。
「山崎さん、どうしました?」
――その声に、美代は会場の方を向いた。
影でよく顔が見えないが、男である事は確かだ。
美代の髪を彩るカンザシが、月光に照らされ、青く輝く。
「…あ、岩野さん」
男が近づく度にはっきりとしてくる顔を見て、美代は呟いた。