【短編】約束
もう一度、「紫陽花ロード」を擦り抜け、あの洋館の角を曲がったら……
きっと、あるはず!
水溜まりを避けながら、ぬかるむ道を走った。
あっ……!
二匹のカタツムリが、私の行く手を阻む。
小さなカタツムリを踏みそうになり、慌てて足を止め、ゆっくりと歩く彼らに目を留めた。
しゃがんで、人差し指でツンと彼らの角に触れてみると、シュッと中に引っ込めた。
歩くスピードとは正反対の素早さに顔を綻ばせながら、一歩一歩確実に前を行く彼らを見つめた。
急がなくたっていいや!
待っていてくれるはずだから。
緑の木々の隙間から、木漏れ日が差し込む。
……もうすぐだ。