【短編】約束
『……なぁに?』
心の内を知られぬよう、軽く左側を向くと、
『ようやく、こっちを向いてくれたね!』
と、優しい笑顔に包まれ、肩に手を回された。
そして、彼の引き締まった腕が、私の弱々しい肩をぐいっと引き寄せた。
『ねぇ、有美ちゃん。俺の方、ちゃんと向いてよ!』
恥ずかしくて、真っ直ぐに彼の顔を見ることができない。
「キャッ!」
小さな悲鳴を上げた。
ふぅ〜っと、生暖かい息を耳に振りかけられ、思わず肩を竦めた。