見上げれば

「ああそうだ、渡すものがあったんだ」

先輩はバッグの中からブックカバーのかかった本を取り出した。

「違う。これじゃないや」

先輩はバッグの中の何かを探しているけれど、
私はブックカバーに釘付けになった。


「これ…」

「ん?」

「これどこで買ったんですか!?」


先輩はフフンと得意気に

「これいいだろー?使い心地もいいんだ」

「前に電車の中でこのブックカバーを持っている人がいて素敵だなと思っていたんです!!

「それは俺だ」


…え?

「これは俺しか持っていないからな」

「どういうことですか?」


「そんなことよりも俺だと気づかなかったのか?」

「え…だって顔見えなかったし、
その頃は先輩のこと知らないし」

「…こんなところで身長差が仇になるとはな」

「え?なんですか?」

「なんでもない」
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