見上げれば

気づけば私は壁側にいて
先輩は正面にいて



ち、近い…!
ど、どうしよう。どうしたらいいんだろう。
動けない。
な、なにか話さないと…


でも、どうすることも出来なくて
バッグにしまい損ねた本を胸の前でギュッと持った。


「貸せ」

先輩はいつかのように私の手から本を取り上げて
スッと自分のバッグにしまった。


そしてあの笑顔で

「これで俺とお前の間にあるものは、何もない」

と言って、また私の肩を持って引き寄せた。

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