見上げれば

…どうしよう。何を話せば…

そのとき、先輩の電話が鳴った。

「ちょっとごめん」


“え?今から?勘弁してよ”
“…分かったよ。いつもの喫茶店だから”


―誰か来るのかな

「悪い。今からちょっと人くるけど気にしないで」

「あ、はい」


それから、いつものように本の話をしていると
喫茶店のドアが開いた。


女の人だ。
化粧してて綺麗な大人の人。


こっちの席にくる。

「トモ」

「ああ、きたか」


そして女の人は私を見て

「ごめんね。すぐ終わるから」

と言って先輩の隣に座った。



「デート邪魔しちゃったわね」

「デートじゃないし」

「可愛い彼女ねえ」

「違うし」



―っ

違うけど。彼女じゃないけど。
わかってるけど。


なんでこんなに苦しいんだろう。
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