見上げれば

先輩は女の人に封筒を渡した。

「早く持って帰れ」

「ダメよ。中身確認しないと」

「なんでさっき言わないんだよ」

「忘れたんだから仕方ないでしょ」



―さっき?さっきって言ったよね
さっきまで一緒にいたってことだよね?



女の人が封筒の中を開けようとした。

「―やめろ。ここで出すな」

「はあ?どうやって確認するのよ」




―私が、私がいるから出せないんだ。
絶対そうだ。そのくらい分かる。

何のことかは分からないけど
女の人が知ってて私には知らないことがあるんだ。

先輩の『言えない』こと、知ってるんだ。

そして先輩は私には知られたくないんだ。

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