願い事叶えます
「…い…大丈夫……です」
ケンは誰かの話し声が聞こえ目を開けた
ほんの一時間ほど眠るつもりが朝まで眠ってしまったようだ
窓から太陽の光が差し込んできていた
ケンが体を起こすと昨日の魔女が机に座り、ケンの携帯で誰かと電話をしていた
…いや、ちょっと待て
「おい!」
ケンがホシに向かって怒鳴るとホシはケンに気づき、電話の向こうの相手と喋りながら微笑んだ
「今起きたみたいです。え?泊まったのかって?
まさか。私だってそんな人様のお家でくつろげるほど図々しくはないんです。
ええ。ではまた機会がありましたら」
別れの言葉を告げ、ホシは電話を切った
「おはようございます。よく眠れました?」
「いや…お前一体誰と話してたんだ」
「えーっとあなたが昨日ほったらかしたお友達の方です」
「はっ!?」
ケンは目を見開き頭を抱えた
「何てことしてくれんだ…」
「どうしてそんなに落ち込んでるのですか?私があなたの代わりに謝っておきましたよ」
ぐっと親指を立てにっこり笑うホシにケンは脱力感を覚えた
「……あいつ変な誤解してねェだろうな…」
「え?」
「こっちの話だ!」
ケンは立ち上がり台所へと向かった
朝食を作るためだ
その後をホシは箒に乗ったままぴったりと着いてくる
「あら、自炊するんですね。見かけによらず」
「見かけによらずは余計だ。ていうかいつまでいるんだよ」
「あなたが私に願い事を唱えるまで、です」
「だから願い事なんかねェって…。
じゃあ卵がないから買ってきてくれ。願い事」
「おつかいはしません」
色々と条件があるのか願い事にも
舌打ちをするとケンは朝食を作り始めた
「……」
ケンは背後からの視線で気が散ってしかたなかった
「…お前も食うか?」
仕方なく問うと、ホシは顔を輝かせた
「私もいいんですか?私、オムレツが好きです」
「卵ねェって」
「そういえばそうでした…。では鶏さんに頼みましょうか」
「にわとり…?」
ケンが訝しそう言うとホシは微笑んだ
「じゃあ、ここをよーく見ていてくださいね」
そう言いホシは自信の手のひらを指差した
ケンは料理を作る手を止めホシの手のひらを見つめた
「はい、鶏さんです」
ホシが一回手を握り再び開くとそこに鶏がぽんと現れた
「!」
ケンは唖然としてその現れた鶏を見つめた
「…そうか…魔女…だったな」
「この鶏さんが卵をくれるそうですよ。ねっ」
ホシが同意をもとめるように鶏に言うと鶏は声高く鳴き声をあげた