願い事叶えます
不意に頭上から声が降ってきて加代子は、はっとし顔をあげた
「え…」
加代子は我が目を疑った
なぜなら加代子の目の前には女の子が浮いていた
いや、正確には箒に乗り、黒いトンガリ帽子を被った女の子
日本では見られないような綺麗な紺色の髪と瞳
まるで…魔女だ
「はじめまして。羽田…加代子さん?」
「はあ…」
我ながら間抜けな声だったと思う
だって目の前に箒に乗り浮いている女の子を見れば誰だってそうなるだろう
「えっと…大道芸の人?」
加代子は苦笑しながら尋ねた
「あら、大道芸に見えますか?
私は正真正銘本物の魔女です」
言い切った
加代子は言葉を失った
少し自分は疲れているのかもしれない
「羽田加代子さん。あなた私に願い事を唱えましたね。あなたの願い私が叶えます」
魔女は薄く笑いながら言った
「叶えるって…」
「いじめたやつを見返したいのでしょう?」
さっき自分が落書きの星に向かって祈った願い事を言われ、加代子はぎくっとした
「…本…物の魔女…?」
「もちろん」
「お願い!あたしを助けて!!」
魔女に頷かれ加代子は藁にもすがる思いで言った
「そうしましょう。ただし報酬は貰いますよ」
「報酬…?お金?」
加代子は不安気に尋ねた
ただの女子高生はそんなに大金を持っていない
「そうですねえ…。じゃあ、それ」
と言って魔女は加代子が身に付けている髪止めを指差した
蝶々の形をした髪止めで加代子のお気に入りだったが加代子はすぐに頷いた
髪止めで願い事が叶うなら安いものだ
加代子が頷いたのを見て魔女は微笑んだ
「じゃあ行きましょうか」