願い事叶えます
あの魔女はおれにしか姿が見えないと言っていた
多分それは願い事をするために星に触れた人間には見えるのだろう
それは声だって同じじゃないのか
見えない人間に声が聞こえるわけない
なぜ電話で話なんかできたんだ?
まさか
こいつも…?
ケンは剛をじっと見つめた
「な、何だよ…ケン」
いや、まさかな
まさかそんなことあるわけ
でも一応聞いてみよう
「あのさお前…最近変な女に会わなかったか?
願い事を叶えるとかどうとか言ってる奴」
ケンが尋ねると剛は瞬いた
違ったか
ケンは瞬時にそう思った
「悪い!今のは忘れてく…」
「お前もか!?」
「は?」
剛が嬉しそうに言うのでケンは面食らってしまった
「ホシちゃんに会ったんだろ!?お前も!
おれもなんだ!昨日お前と別れてから少しした後に家の前になんか小さい落書きがしてあってよ。
それに『願い事を3回唱えてね』って書いてあって試しに唱えたら…!!
めちゃくちゃ綺麗な魔女が現れたんだよ!!!
すげェよな!!!」
やっぱりそうなんだ
剛も星に触れた人間だったのだ
「ん!?待てよ。じゃああの電話の声はホシちゃんか!
そうか!そうなのか!なるほどなあ」
剛は1人で納得ししきりに頷いている
「…でお前…一体何を願ったんだ…?」
ケンが聞くと待ってましたとばかりに剛は微笑んだ
「実は、お前と別れてから家に帰るまでにめちゃくちゃ美人な人に出会ったんだ!
その人とできたら付き合いたいって!」
「は…?そ、それで」
ケンが聞くと剛はブイサインをした
「まさか」
「そう!そのまさか!
もう二度と会えないと思ってたのにおれはその人とすれ違う時に免許証を落としていたらしく、
その人はわざわざ届けにきてくれたんだ!」
なぜ免許証を落とす…
ケンは思いっきり顔をしかめた
「多分なーホシちゃんがそういう機会をつくってくれたんだ。
はあーなんていい子だ」
剛は幸せそうにため息をついた
「それでよー彼女できたって晴美に自慢したら『わたしだって!』って言ってたんだ」
剛が言った言葉にケンは、瞬いた
「え…お前今何て言った…?」
「は?だから晴美に自慢したら…」
「晴美!?」
ケンは思わず叫んだ
「あ、ああ…あれお前晴美知ってたっけ?
おれの妹、鈴宮晴美」
「な…そうだったのか…」
ケンは頭を抱えたい気分だった
出合いとは意外なところで繋がるものだ
「んー?会ったことあるか…ケン?」
「い、いや…」
まさか先程告白されたとは兄に言えないだろ
剛は、ふーんと頷きそしてふと腕時計を見て、あっと叫んだ
「やべ!時間だ!
じゃあおれ行くから…彼女のところに」
にやっと笑いかける剛にケンはさっさと行けと手で追い払う
剛が走っていくのを見送ったケンは本日一番盛大なため息をついた