願い事叶えます
人殺し
その単語にホシはビクッと肩を震わせた
ケンがこちらを見ているのが感じられる
「…私の願い事…叶えなさいよ…」
彼女は脅すような口調でホシに言った
「あんたのせいで人生めちゃくちゃなのよ!!!!
仕事には就けないし、結婚だってもうこの年じゃ無理だし、
それに借金はどんどん増える!!!
誰もが私を蔑んだ目で見るのよ!
服を買うお金もないのよ!!!
美容院に行くお金も!!
1日1日食べていくので精一杯なのよ!
わかる!?この気持ち!?
わからないでしょう!!
だって私をこんな生活に陥れたのはあんただもの!!!」
彼女は肩で息をしながら叫んだ
ホシは顔を歪ませた
「でも、私はあのとき言いました。
あなたは 多分今後の人生普通の人より生きにくいでょうね。だってズルをして生きたのですからって 。
佐々木恵子さん…佐々木文哉くんのお母さん」
「ええそうよ!言われたわよ!
でも私だってその時言ったわ!文哉がいれば生きていけるって!!!
その文哉を殺したのは誰!!!?あんたでしょう!!!」
「でも、約束はやくそ…」
「ふざけんじゃないわよ!!!!
何が約束よ!!!!!
何が魔女よ!
…もう…何なのよおおお」
佐々木恵子はその場に泣き崩れた
「でも…いいわ…私これで終わりにするの。
願い事を叶えてくれるのでしょう?魔女さん」
佐々木恵子はさっきの怒鳴り声とは打って変わって甘い声でホシに尋ねた
「私を…私を殺して!!!
そして文哉と会わせて!!!
叶えてくれるんでしょう!?ねええ!!!?」
「あなたの願い事受け取りません」
ホシは後ずさりたい気持ちを一生懸命殺して言った
その時の…
佐々木恵子の顔は一生忘れられない
絶望と、怒りと、憎しみが混ざった顔は…
「…どう…して…。どうして!?どうして!?
私の息子は殺すのに、私は殺さないの!?」
「私は…」
「この人殺しが今更怖じ気づいてんの?
どうせ毎日人を殺して楽しんでんでしょう!?魔女はさあ!」
「私は!!!」
ホシは声を荒らげた
佐々木恵子は今までおとなしかったホシが突然大声を出したので怯んだようだった
「私は…あなたを殺したくない。
決して誰の願いであれ、自分を傷つける願いは私は絶対に聞きません…!
願い事は…自分のために叶えてほしいのです。
自分を傷つける為にそんなこと願わないで…」
ホシは佐々木恵子を見ながら声を振り絞って言った
佐々木恵子はそんなホシをぼーっと見つめていた
「は?」
その冷たい声にホシは後ずさってしまった
「何…?何なのあんた…。意味わかんない!!…っざけんなああ!!!
殺してよ!!!!!!私も!!!
それかあんたも道連れに…!!!」
佐々木恵子が叫んでいる時、今まで黙っていたケンが佐々木恵子に歩み寄った
「恵子さん?」
佐々木恵子は洗い息をしながらケンを見上げた
ケンは腰を落としすっかり興奮してしまっている恵子の背中を撫でた
「子供がいたんだな…。何歳だった?」
「…9歳よ…」
「そうか…」
ケンが頷くと恵子の目からどんどん大粒の涙が溢れた