願い事叶えます
「まだ…こんなに小さかったのよ…。
いつも私たちを心配そうな顔で見ていた…。私たち夫婦が喧嘩ばかりするから…。
それで私たちを仲直りさせるためにその魔女に願ったのよ…。
一時はね…仲直りできたの…。
だけど…だけどあの男はすぐに…。
そして私は一度死んだの。
そして文哉が助けてくれた…。
またその魔女に願って。
…二個目の願い事に心臓をとられるなんて文哉は知らなかったはずだわ…!!
まだあんなに小さかったのに!
まだ子供だったのに!!」
恵子はそこまで言って、わっと泣き出した
ケンはその背中を擦ってやり、おもむろに口を開いた
「…子供っていうのは少し違う気がする」
ケンの言葉に恵子は顔を上げた
「9歳って確かに大人から見れば子供だけど、実は意外ともう大人なんだ。
だから文哉って子は知っていたんじゃないのか?
自分が死ぬってこと」
恵子は大きく目を見開いた
「それでもあんたに…お母さんに生きててほしかったんだよ。
一度目の願いも、二度目の願いも両方あんたのためだ。
あんたに幸せになってほしかったんだよ。
そのために自分が死んでもいいって思ってたんだ。あんたが生きているなら」
「ふ…ふみや…」
「せっかくあんたの息子が救ってくれた命を、お母さんが無駄にしたって聞いたら悲しむと思う。
あんたは息子のために生きなければならねェ。
生きるってことは誰かのために生きるってことだ」
恵子は地面に伏せ先程よりも大きな声で泣き叫んだ
「ごめんない…!ごめんなさい…!!!!」
ケンは立ち上がりホシを見た
ホシは泣き崩れる恵子を見ていた
「ホシ」
ケンが呼ぶとホシは顔を上げた
「この人を休まさせてやれ」
ホシはケンを見、そして恵子を見ると頷いた
ホシは恵子の肩を抱いた
「ごめんなさいごめんなさい!ごめんねええええ…!!!」
「もう、大丈夫ですよ。あなたの声きっと届きました。ゆっくりお休みなさい」
恵子が小さく頷くのが見えた
きっと
「"スリープ"」
誰も彼女を責めることはできない