願い事叶えます





「兄様」






ホシの冷たい声でケンは我にかえった





「…だから、一体、何を、聞きたいんですか?」



一語一語区切って言うホシの声音はかなり苛ついているようだった




「あ…」




さすがにツキもホシの苛立ちを感じとり顔色を変えた




「えー、あーそうだな。そろそろ本題だな。うん」



ツキはごほんと咳払いをし、口を開いた





「ホシ」






ツキが先程のふざけていた声とは打ってかわって低い声でホシの名を呼んだ




ホシはゆっくりツキに目を向けた






「お前、心臓を集める気はあるか」


















ホシはしばらくの間何も表情を変えずツキを見て黙っていた







そしておもむろに口を開き言った









「ありません」





ホシが言うとツキは大きくため息をついた








「そうか…残念だホシ」











その瞬間、ツキは恐ろしい速さでどこからかナイフを取りだし、ホシの首に向けた


少しでも動かしたらホシの首が切れてしまう




ケンは目を見開き腰を半分浮かせた




「お、おい…!」



「動くな」



目だけケンの方を向き、ツキは低い声で言った



ホシはといえば臆することもなく、じっとしている



「ホシ…それは、反逆か?それとも自己満足か?」



ツキは再び視線をホシに戻し言った




「反逆ではありません。自己満足です」



「なら、その身勝手な自己満足をすぐにやめろ。

じゃないとお前の首が飛ぶぞ」




「…くそ」




何故おれの体は動かねェ




恐ろしいからか




1人の女が今危ないというのに




助けられない







「いくら…兄様だからといって」







ツキの持つナイフがぴくりと震えた




ケンは驚きホシを見た





一瞬、ホシの目の色が変わったように見えた









綺麗な紺色が、一瞬電気が点いたように紅く…








「私の命、易々と渡すわけにはいきません」





今、ホシの目は完璧に紅くなっていた



その紅く燃え上がるような瞳はツキを射ぬいている





突然、ツキの持つナイフが音をたてて割れた







刃の部分は粉々になり柄のみ残っている状態だ








「…ホシ。反逆ではないというのならば今、ここで、こいつの心臓を貰え」







ツキはナイフが砕かれたことにはさして驚いている様子はなかった



むしろ、残った柄のみのナイフを捨て、顎でケンを指し心臓を貰え、と言っている























いやいやいや











おれが今一番危ない












ケンは冷や汗を流しながらホシとツキを交互に見ていた






ホシはケンをじっと見た



その瞳はもう元の色に戻っている













「はあー…」









ホシは拳を握り息を吐いている






よく漫画で見るその光景

















な、




殴られる…!!!





ケンが思わず目を瞑ろうとしたとき、ホシは、ツキを思いっきり殴っていた








「ぶっ!」





ツキは弱々しくぶっ飛び、ばたーん!と床に倒れた












「…え?」




ケンは目を点にしてその光景を見ていた








「ふざけるのもいい加減にしてください!!!


兄様が一番わかっているはずです!!!
私が心臓を貰わない理由!

あなた、この前言いましたよね?
過去がどうとか。

そうですよ!!私はあの時のことを引きずっています。

でもそれの何が悪いんですか!?
悪いのはむしろ…!!!」





ホシはそこまで言って口をつぐんだ





そして1つ深呼吸をし、落ち着こうとしていた










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