願い事叶えます
ケンが自分のアパートに帰り、部屋の扉を開けるとホシが中で御茶を飲んでいた
「おかえりなさい」
「…」
「あら。どうしてお前がおれの部屋にかってにいるんだ!って聞かないのですね」
「慣れた」
ケンは大きくため息をつき、ホシの側に据わった
「…私は…魔女です」
「知ってる」
突然の告白にケンは真面目に答えた
「そしてあなたは普通の人間です」
「それも知ってる」
「…私が今あなたの側にいるのは、あなたがいずれ私に願い事を唱えるかもしれないからです」
ホシは手に持っていたお茶を置いた
「だから私があなたの願い事を叶えた後は、あなたと私は何の関係もありません」
「…だから?
だから何だ?それがおれがお前を忘れる理由なのか」
「ケンさんは普通の人間。本来ここまで魔女と深い縁を持つはずはないのです。
ケンさんが私のことを覚えてる限り、あなたは普通の生活はおくれないかもしれないで…って!!!」
ホシが言い終わらないうちにケンはホシの額にデコピンを食らわした
ホシは驚き、額をおさえた
「な、何するんですか!?」
「お前なァ…それおれのこと考えていってんのか?
だったらすげェありがた迷惑だ」
「え…?」
「そもそもおれに普通の生活おくらせたいんならおれの前に初めから現れるな」
「う…」
「それに、おれは…おれは。
お前と会えてよかったと思ってるし、この普通じゃない生活も最近は面白いと思う。
もし、おれがお前のこと忘れて、元の生活に戻るんならおれは、その生活をつまらねェと思う」
ホシはケンの言葉に目を見開いた
「…だから…、いいんだよこのままで」
「ケンさん…!!」
ケンを見つめるホシの目から涙が溢れた
「え、な、泣くなよ…。悪ィ」
謝るケンにホシは首をふった
「違うんです嬉しいんです…。
でも、ごめんなさい。私さっき少し嘘つきました」
ホシは涙を拭うと苦笑した
「ケンさんのためを思って、じゃないんです。自分のためなんです」
「自分の…?」