願い事叶えます
ケンは家に帰ってきてしまっていた
急いで歩いてきたため軽く息が上がっていた
「…なんだったんだ」
大きくため息を吐き、自分の部屋に入った
「…お世辞にも綺麗なお部屋とは言えませんねえ」
ケンは驚き振り向いた
本当にびっくりした
心臓が悪い感じでドキドキするのを感じながらケンは再びため息をついた
「…お前、不法進入…」
箒でふわふわと浮いている彼女にケンは言った
「魔女に不法進入もありません。
早く願いを私に唱えてくださいよ」
なぜ願いを言うのを強要されなければならないのか
というより、そもそも彼女は一体何者だ
人の家にのこのこと入ってきて
「お前は一体何者だ?何が狙いだ」
精一杯彼女が怖がるように低い声で脅すような口調で言った
「さっきから言ってるじゃないですか。
私の名前はホシ。あなたの願いを叶える魔女です」
「からかうのは止めてくれ。警察に通報するぞ」
「からかってませんよ。あなたの言うけーさつ?には私の姿は見えないと思いますが」
真面目に答える彼女に次第にケンは腹が立ってきた
「じゃあ、お前が本物の魔女だとでもいう証拠を見せてみろ。おれが納得するような」
魔女だという証拠なんてあるはずがない
これで諦めてさっさと帰ってくれるだろう
ケンはそう思っていたがその考えは甘いようだった
「なるほどなるほど。証拠を見せればいいんですね」
彼女は頷きながら片手を軽やかに動かした
「″クリーン″」
その言葉と共に、部屋の全てのものが一斉に動き出した
いや全てのものは言い過ぎた
正確にいえば出しっぱなしにしてある本、畳むのが面倒でベッドの上に置いてある服
また起きた時からそのままのベッドシーツ、布団
それらのものがあるべき場所へ自分で戻っていった
「綺麗になりましたね」
満足そうに笑いながらホシは言った
「お…まえ…本物の…」
ケンは目を見開きホシを見た
「はい本物の魔女です。やっと信じてもらえましたね」
まだ自分は20年くらいしか生きていないが、例えば70年生きた老人でもこんな経験した人はいないのではないだろうか