カメカミ幸福論
だけれども確かに恥かしい。文句だけは言って、仕方なく私は人波に従った。小暮はさっさと改札を出てしまい、今更もういいから帰れ、とは言えない距離にいってしまったのだ。
・・・・・ああ、そうか。あいつ営業じゃん。うう~・・・ペースを崩されちゃってるよ、私。
だけど誰かとこんなに話したり行動したりするのがとても久しぶりで、美紀ちゃんとの食事で使った体力も大きく、人といるのに不慣れな私にはもう暴れる元気はなかったのだった。
そんなわけで、うんざりして駅を出る。
そこには外灯に照らされて立つ小暮と、その隣をふわふわと浮かぶ白く輝く神。・・・・・ああ、一人になりたい。
私はため息をついて、小暮のいる場所までゆっくりと歩いていった。それから背の高いヤツを見上げていう。
「・・・小暮が気にすることないのよ」
「ん?」
私が何を言い出したのかを計りかねたか、小暮が首を傾げた。
「今日の昼休みの終わり近く、実は偶然聞いちゃったのよね、喫煙コーナーでの同期会の話題」
小暮が真顔のままで私を見た。
「それで美紀ちゃんが・・・あ、山本さんが怒っちゃって、それ慰めるのもあって今晩飲みに行こうってなったの。他人事なのに本気で怒ってるからさ、あの子、優しいよね」
それで美紀ちゃんと飲みに行って、久しぶりに過去の話もして――――――――で、小暮が登場して。・・・ってあれ?美紀ちゃん、いつ小暮に居場所をリークしたんだろう?
若干の疑問がわきつつあったけれど、とにかく今は関係ないことだ。私は言いたかったことを頭の隅から引っ張り出して無言で見ている小暮に言った。