カメカミ幸福論
こおおおおおおらあああ~!!このバカ神!!手をはなせ~!!
「いいから黙れ、ムツミ!今お前の人生でかなりいい場面なんだぞ!」
疫病神に口を塞がれて発言の自由を奪われている今がどうして人生でかなりいい場面になるのよ、バカ野郎~!!フガフガと変な音を漏らしながら私は渾身の力で口をこじ開けようと努力した。
くっそ~!!
「でもやっぱりそうなんだなって今晩思ったんだ。会社出るときに、総務から社内メールきてるのに気がついて。そうしたら山本さんで、亀山さんとここで飲みますって教えてくれてた。だから同期会は抜け出してそっちに行ったんだ。・・・行くとき、楽しかった。カメに会えるって思ったから」
気、気、気のせいよ、小暮君~!!ってか美紀ちゃんたらそんな職権乱用をしてたのか!敵に回すと恐ろしい後輩なのだな!私は相変わらずダンのバカ力に無理やり抵抗しながらそんなことを思っていた。
言いたい。声を大にしていいたいのよ!小暮、それはあんたの気のせいよ~って!手をは~な~せええええ、バカ神~!!
小暮が足を止めて振り返った。途端に私の全身から、ダンの力が取り去られたのがわかった。パッと口から空気が入ってきて、驚いた私は目を見開く。
・・・・あ・・・自由に、なった―――――――――――
「だから、カメ。俺と付き合ってくれないか?今よりも・・・ただの同期よりも、もっと近い存在になりたいんだ」
見開いた私の目。その一杯の視界の中には、真ん中に真面目な顔した小暮が外灯に照らされた姿が。そしてその斜め後ろに浮かぶキラキラの疫病神――――――――――
「うんだ!うんと言え、ムツミ!!」
バタバタと両手を振りまわして激しく頷きながらそう叫んでいる。超、楽しそうな神。
・・・・・・・ああ、殺してやりたい。