カメカミ幸福論
それに、所謂アジア人カラーではなかった。腰までありそうな髪の毛は白に近い金髪だし、瞳は何という色なのかが判らない変わった色をしていた。その点も、物凄く異常。
私は警戒心丸出しで腰を抜かしていた。動きたくても動けないのだ。余りにも非常識なことを体験して、頭は冷静なようでも体にうまく命令を出せないようだった。
「あんたが、カメヤマムツミ、か?」
その男が流暢な日本語で言った。
悔しいことに、声までいい。
言葉をあまり知らないので形容しようがないが、「透明感溢れる美声」などと、CDの帯にはかかれそうな声と言おうか。男性、だろうと思うけれど、声だけではハッキリとは断定できないような明るくて心地よい声。
って、そこじゃないのよ。今この人、私の名前呼んだ!?
「・・・」
返答しようにも、何を言っていいかが判らない。私はただ口をパクパクと開けたりしめたりしている。彼はそれをじっと見て、また同じトーンで聞いた。
「カメヤマ、ムツミ?」
「・・・」
「カメヤマ、ムツミ?」
「・・・」
「カメヤマ――――――」
「うわああ!そうそうそう!私はそういう名前ですよっ!!」
同じ表情、同じ声で淡々と繰り返されるのにぞっとして、ついそう怒鳴ってしまった。に、逃げたい。ちょっとちょっと、誰か助けて。