カメカミ幸福論
「や~か~ま~しいいいいいいいい~っ!!」
あまり叫ぶことは出来ない。それでなくてもここの壁は薄く、最近は一人暮らしのはずの私の部屋で一人でベラベラ喋っていると隣室の男性に思われているようなのに。先日部屋の前で出くわしたときに、何度か気味悪そうな顔で見られたのだ。
それにまだ小暮がそんなに遠くに行ってないかもしれない。ここは、慎重かつ冷静かつ爆発的にダンを締め上げたいところだった。
相変わらずキラキラと全身を光らせて、好き勝手やらせて貰うと宣言したダンが不機嫌そうに腕を組んで私を見下ろしている。
「あんたっ!!今日は一体なんだったのよ!?会社でも脅迫するわ、後ろでぎゃあぎゃあ喧しいわ、背中押したり口塞いだり!あ、あ、あんたの人形じゃないのよ私はっ!!」
憤死しそうだった。人生でこれほどまでに怒ったことなどないに違いない。どっか~んだ、どっか~ん!全身がカッと熱くなっていて、私は既に涙さえ浮かべてダンに突っかかる。
ヤツは不機嫌そうに眉間に皺を寄せたままで、ぶるぶると震える私に言った。
「ムツミは愚かだ」
「ううううううるさいわね!!」
これ以上怒れないわよ~!!私は伸ばしている爪をヤツの綺麗な顔に引っ立てたくて死にそうだった。ダンは冷ややかな目線を私に送りながら続ける。
「折角お前を好きだといってくれる男が現れたのだぞ。どうして付き合うといわなかったんだ?」
「わ、わわ私は別に小暮が好きじゃないからよっ!」
「嫌いなのか?」