カメカミ幸福論


 私が疲れきって瞼を強く揉んでいると、ダンがよし、と言った。

「今までは消えてやってたけど、今からとにかく俺はムツミの側を離れないからな。こんな綺麗な同居人がいるんだ、喜べよ~」

「は?」

 ガン見した。ノイズ?何かのノイズなの??・・・・・・今、なんつった、あんた?

「ほら、明日も会社だろう。そろそろ寝る用意をした方がいいんじゃないのか?いつもの服はどこにあるんだ?あれを着ないと寝ないのだろう?」

 ダンがパジャマのことを言っているのはすぐに理解した。理解出来ないのは、どうしてそんなことをヤツが言うのかで――――――――・・・

「そんな顔しなくても、まだ観察対象だ。ムツミ、手を出しはしないから安心して眠ってくれ」

 にーっこり。そしてキラキラ。

 無駄に光をばら撒くダンを呆然と見詰めて、私はやっとこさ理解した。

 今までは、夜になればこいつはどこかへ消えていた。朝がくれば部屋の中に現れるけれども、夜の間は私を一人にしてくれていたのだ。それに安心していたら、何と!

 ・・・ヤツは、消えることを止めるらしい・・・。


「え?」


 とにかく、私はそう言った。ご丁寧に、聞こえないぞ、のジャスチャーまでしてみせた。それでなかったことにしたかったのだ。あ、やっぱりナシってダンが言うのを物凄く期待して。ところがダンはニコニコと笑ったままで繰り返すのだ。着替えなくていいのかって。


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