カメカミ幸福論
そう、本人から昨日の夜に宣言されたけれど、本当にいやがった・・・・。私はうんざりして、しみじみとその美しい物体を眺め回す。
きっと私は髪の毛も跳ねて、目やにもついているはず。それから涎のあともあるかもしれないし、シーツや枕のカタもあるかもしれない。ハッキリと断言出来るが、人に見せられるような寝起き顔ではないだろう。
・・・くそ、綺麗な野郎だな。つか、神も寝るんだな・・・。
朝から暑いってだけでムカつくのに、そんなことで余計に不機嫌になってしまった。
私はブランケットを蹴り飛ばしてクーラーのスイッチを入れる。
放置だ放置。神が寝るものとは知らなかったが、もし寝過ごしてくれれば私はその分一人で居られる。だったら親切に起こしてやる必要はないではないか!
よし、そう思ってここ3年の自分を裏切る勢いで出勤準備をし始めた。静か~に、出来るだけ音を立てずに。
こっそりと洗顔をしてこっそりと化粧をし、もう朝食は無視して会社用の鞄を持った。和室6畳の部屋の真ん中にいるブランケットの中身は動かない。よしよし。私はゆっくりとパンプスを履いて、そろ~りと玄関のドアを開ける。
「ムツミ、今日も自転車か?」
「うわひゃあっ!??」
どっきーんと心臓がはねて、一気に私は後ずさる。そのまま玄関の段差に足をひっかけて、後ろに倒れこんでしまった。
「なっ・・・な、な・・・!」
目の前には、ダンが立っていた。いつものように無駄に美しいパーフェクトな姿で、そのブロンドの髪には一本の乱れもなく、色を特定出来ない不思議な瞳で私を見下ろしている。