カメカミ幸福論


 後ろに倒れこんだときに強かに腰や背中を打って、その痛みに涙目になる私は愕然とヤツを見上げていた。

 あれ・・・?だって、まだ寝てるんじゃ――――――?

 私の混乱する姿を面白そうに見て、ダンはにっこりと笑った。

「どうしたムツミ。何をそんなに驚いている?」

 私はぐるんと首を傾けて、さっきまでヤツが寝ていたはずの和室へ視線を飛ばす。するとそこには、綺麗に畳まれたブランケットの何の乱れもないいつもの部屋が。

「何で!?あんたさっきまで寝てたでしょうが!」

 私はつい大声で叫ぶ。何でさっきまであそこで寝ていたものが、今ここに完璧な姿で立ってるのよ!?って。それに嫌そうな顔もせずに、ダンが手を差し出した。

「俺は神だぜ。人間と一緒にするな。ほら、行こうか?」

「・・・」

 パクパク。口は開けど、唖然としていて声が出なかった。呆然としているままにダンに引き起こされて、私はいつの間にやら自転車のところへ。

 既に空中に浮かびながら、ダンが首を傾けた。

「いつもより早くないか?ムツミは朝ごはんは食べたのか?」

 今更ながらに腹が立ってきて、私は憮然としたままで答える。

「食べてないわ。ダンが寝ている内に出ようと思ったから」


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