カメカミ幸福論


「おやおや。失敗したんだな~」

「うるさいわね」

「では、朝食といこう」

「は?」

 何言ってんの?そう思って私はくるりとダンを振り返った。すると、いつの間に引き寄せたやら、ダンの手の上にはリンゴが一個と菓子パンが。

「・・・」

 ものすご~く、見覚えがあった。どちらも私の部屋にあったやつではないか?確か、たし~か、今朝はこれを朝食にしようと昨日の夜帰ってくるまでは思っていた食材だった。

 どうして、今、ここに?それになぜ、それを知っている?

 私は疲れてがっくりと肩を落とす。光をばらまく極上のイケメンが、私がコンビニで買ったカツサンドを手にしているのはどこから見てもシュールな景色だったのだ。勿論、また頭の中を読まれたらしいという気持ち悪さにも疲れを覚えていた。

「・・・いいから、それ仕舞って。勝手に人の部屋から取り寄せるのやめてくれる?」

 ダンはキョトンとして首を傾げる。

「だって朝食というものを、人間は食べる必要があるのだろう?」

「今日はなくていいわ」

「おいムツミ~」

 くっそう!こんなはずでは!

 私はもう振り返らずに、さっさと自転車に跨る。調子が狂いまくりだ。本気で一緒に住むつもりなの、こいつ?ってことは私は24時間こんな干渉を受けなきゃならないってわけ!?

 ダンが夏前に現れて以来、毎日心の中でや言葉にして言っていた単語が今日も元気に頭の中を回る。


 ・・・超、理不尽・・・。




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