カメカミ幸福論


 私は口をあけっぱなしにしてダンの整った顔を凝視する。

 ・・・あんたが言っているのは――――――――つまり・・・。つーまーりー?

「俺を同棲している人間の男だと思えばいい。年齢相応の色気を出すには心地よくなることだ。俺は、ムツミを喜ばせる自信があるぞ」

「はっ!?」

 何てこと言うのだあんたは!私はそう思って更に背中を壁にひっつける。喜ばせるって、つまり、ホラ、ちょっと待ってよ、今はこいつ大人モードなの!?

 ババっと顔が赤くなったのが判った。

 手からチーズが落ちたことにも気がつかずに凝視する真っ赤な私を見て、ダンが軽やかな笑い声を漏らした。

「人間は親愛の情を示すためにもキスをするのだろー?ならそれをしよう」

「―――――――――――」

 ・・・ああ、何だ、ほっぺチューかよ。私は思わずドギマギしてしまった自分を心の中で足蹴りにした。ああ、びっくりした。

 ダンが読んでいた雑誌には、確かにそんな特集があったはずだ。外国の諸事情、とかそんな題名で。それを読んだのね、きっと。

 私は赤くなった顔をこれは酔いのせいだと無理やり決め付けて、手でダンをしっしと追っ払う。

「嫌よ。あんたと私は別に友達でもないでしょうが」

「ムツミ~」


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