カメカミ幸福論

・亀と神



 私はバラ色の空間にいた。


 立っている感触はなかったから、浮かんでいるのだと思う。

 上も下も判らないような、とにかく線がない世界。私はしばらく周囲をぼんやりと見回していて、それから首を傾げる。

 ・・・どこだ、ここは?

 そのバラ色の空間は、そうとしか表現出来ないが、淡いピンク色で染まっていてどこまでも遠いようだったし、物凄く狭いようでもあった。

 ああ、そうか。これは夢の中なんだ。

 自分でそう思って頷いた。たまにある、夢の中であるということが判っている状態。きっとあれなんだろう。だってこんなに綺麗な世界、私は知らないもの。

 私はそう納得して、それから再度どうしたものかと思う。

 夢の中にいるとして、そこから覚めるにはどうしたらいいんだろう?そもそも今って何時かしら。もしかして朝だったりしたら、まだ週の途中だから起きなきゃだし――――――――――

 起きて、会社に行かなければ。私は困って眉を寄せた。

 あまり働かない社員なのだ。これで遅刻までしたら首が飛ぶかもしれない、それくらい崖っぷちに自分がいることは自覚している。

 ふと視線を感じて振り返る。


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