カメカミ幸福論
言葉にならないままで、私は驚きの表情を固定していた。それは、何だって~?!という意思表示だったのだけれども、何と不幸なことに、その場にいた家族はそうとらなかったようだった。
「む、む、睦~!」
バタバタと荒い足音がして母親がすっとんできた。何と、手には包丁を持ったままで。
「そうなのっ!?そうなのね、むっちゃん!!彼氏が出来たの?それとも好きな人が?」
「は?いや――――――」
怖いわよ、お母さん!私は冷や汗をかきながら家族の勘違いの訂正を試みる。だけどその声に被せるように、今度は父親が大声で言った。
「ああ~、お父さん本当に安心したぞ。今晩はうまい酒が飲めるな、いやいや、睦、良かったなあ~」
「へ?だから、ちょっと――――――」
にやりと不気味に笑った兄貴まで、横目でこっちを見ながらダラダラと続ける。
「ま、良かったな。これで我が家初の嫁だしが出来るかもしれないんなら、親戚も黙るだろうし。俺もその点でかなり嬉しい」
「ちがっ・・・」
ちょっと待って~!!
今や冷や汗をダラダラかきながら、私は急いで両手をバタバタと振り回す。だって、そりゃあ人間じゃない男とは同居しているけれども、それで色気が出るなんてことはないだろうって思ったからだ。
まさかまさか、そんな!なら、私の色気が出た(らしい)原因は、やっぱり私も女だったんだなあ!と気付かせるに至った小暮の告白か!?