カメカミ幸福論
ここで焦りまくった私は失言をしてしまったのだった。
絡む舌で、かなりの期待に満ちた顔で娘を覗き込む両親のキラキラした瞳をみていたら、つい口が滑ったというか。
仰け反って壁に背中をつきながら、私は叫んでいた。
「や、まだ付き合おうって言われただけで、返事もしてないから!」
両親の目が更に見開かれた。
「おおおーっ!!!」
・・・あ、しまった。
そうなの、お付き合いを申し込まれたのね~!!それは素晴らしいわ!とはしゃいだ声を出す母親と、照れながらも嬉しそうに笑って新聞を畳む父親、既に興味を失ったように音楽の世界へと没頭する兄貴を視界の中に捉えて、私は全身の力が抜けていくのを感じた。
・・・・あああああ・・・・。
ふわふわと天井近くを浮かびながらその全てを見ていた神が、にやりと笑ったのにも気がつかなかった。
勿論、想像はつくと思いますが。
その夜の食事時には、家族揃って私の「明るい未来」の話で持ちきりだったのだ。私は何度かお箸を折りそうになりながら、必死で母親の追撃をかわしていた。
その方、一度お食事にでもお呼びしたら?などと言うのだ!
「どうして付き合ってもいない同僚を実家の食事に呼ぶ必要があるのよ!?」