カメカミ幸福論
いい加減頭にきてそういう私に、既にお目目一杯にハートマークを浮かべて母親は言う。
「だってこんなにどうしようもない娘を女性として気に入ってくれる素晴らしい人なのよ!食事でもてなすくらいのことをしなくっちゃ、申し訳なくて!」
・・・あっそ。
上機嫌の父親は私のコップにがばがばとビールを注ぎ、兄貴は食べるだけ食べたらさっさと居間へ移動して愛用の雑誌を寝転んで読んでいる。その兄貴に寄り添うようにして、ダンが同じように寝そべって雑誌を読んでいるのにはちょっと笑えたけれど、小暮の事を口滑らせてしまった後悔にさいなまれていた私はただただ帰りたかった。
だけど、今日は実家で泊まりなのだった。
毎年盆暮れはそうしているから、今日に限ってやっぱり帰るなどと言っても両親は許可しないだろう。
私は重いため息をついて、祖父母の部屋へ逃げ込む。
最近は横になっていることが多くなった祖父母はご飯も早いので、夕方の6時には自室へ切り上げていたのだった。
「おじいちゃんおばあちゃん、ちょっとお邪魔するね。匿って頂戴」
「あら、睦ちゃん」
おばあちゃんが柔らかく微笑む。
幼少時、両親が共働きだったので、私と兄貴の面倒を引き受けていたのはこの父方の祖母だ。故に未だに、祖母には頭が上がらずに、祖母の前にくると自分が小学生の頃の自分に戻ってしまうような気がする。
「何だか賑やかだったわねえ。何かいいことがあったの?」
寝巻きに着替えてテレビを見ていたらしい祖母が、リモコンで画面を消してからそう聞いた。