カメカミ幸福論
何だか、深くていい話を聞いてしまったようだった。漠然と思っていたこと、それをすっきりと言葉にしてもらったような感覚。ああ、そうか。そう簡単に頷けてしまうような感じだ。
恋愛に対しても、淡白。それは我が家の遺伝なのかもしれない。だけど、皆相手を見つけて家庭を築いてきた。その対処法なんだろうな、我が家の教え、そういうことなんだろうな、と思ったのだ。
小暮のことを考えた。
側にダンが居なかったから、本当に久しぶりに、私は私だけの空間で頭の中で喋ることが出来たのだ。
あの夜。
外灯の光。
ちょっと照れた、だけど真剣な目。
思い出す。
その時は個人的に色々忙しくてそれどころじゃない状況だったから彼の言葉は浮かんでこなかったけれど、その場面だけは、しっかりと思い出すことが出来た。
小暮は、嫌いではない。
むしろ分類するなら好きな人間だと思う。
同じ会社で仕事をする人として考えれば尊敬もしているし、確実に社会の役に立っていて、あまりふんぞり返ることなどない。それもいいと思う。
そして、彼の前では私は気取らなくてもいい。
今更気取っても仕方がない。
気の合う同僚としてみていた期間が長かった分、どちらかというとダメな部分ばかり、女性らしさとは無縁であるところばかり見せてきたように思うのだ。
―――――――――自分を殺さなくてもいい、相手・・・。