カメカミ幸福論
・喪失感のわけ
翌朝、私はいつもの目覚まし時計を消そうと無意識に手を伸ばし、無駄にパタパタと空間を叩いていた。
実家にいるということをすっかり忘れていたのだった。
目覚まし時計がないぞ、そういえばタオルケットの匂いが違うぞ、とそこまで考えて、ようやくここが実家であるということを思い出した。
私は手だけをもう一度のばして、クーラーのスイッチを入れる。
・・・暑いわ、やっぱり、この部屋。今何時だろう・・・。
まだタオルケットの中でごそごそとしながら、ようやくぼんやりと薄目を開けて、しわがれた声でダンに話しかける。
「・・・うう~・・・ダン、今何時~・・・?」
返事は無し。
・・・くそ。まだ寝てるのか、神のくせに。私は自分の行動はあっさりと棚の上にあげて、隣で眠りこけているはずの神をこき下ろす。
なんてったって、人間である私は神を叩くことも蹴ることも出来ないのだ。だからヤツを起こすのには声でしか無理なのだという、ちょっと腹が立つ現実。
ああ~、一度でいいからやつを蹴飛ばしてみたい。
頭まで被ったタオルケットの中で無視されて不機嫌になった声で、もうちょっとしっかりと聞いた。
「ダンってば。今何時~?」
やっぱり返事はなし。
・・・あ、マジでムカついた。