カメカミ幸福論


 私はガバッとタオルケットを剥ぎ取って叫んだ。

「ダンってば!!」

 実家の2階、廊下の一番奥の5畳の部屋。和室に窓が二つで、風通しもよくて日もよく入るその部屋の真ん中に敷かれた布団の上で、私は一人で寝転んでいた。


「・・・・あら?」


 眉間に寄った皺をといて、私はゆっくりと上半身を起こす。

 ぐる~りと周りを見回した。

 オレンジの水玉模様のカーテンは少し空いていて、その間から真夏の朝日が差し込んでいる。それから、小学校の時から使っていたアニメのキャラクターのシールが貼られた箪笥。もう学習机は片付けられていて、両親の冬用の服がいくつかの収納袋に入れられて部屋の隅に置かれている。

 ・・・・・ダンは、どこ?

 天井の隅々まで確認して、あの無駄に光輝く全身を持った美男神を探した。

 でもどこにも姿は見えなかった。

「おーい。・・・あれ?」

 呟けど、一人。

 私はボサボサの寝起きの頭と顔をして、わけが判らなくてぼーっとしていた。クーラーの動く音だけが小さく部屋の中を満たしていく。

 どこに行ったのかは知らないけど、とにかくダンはこの部屋にはいないらしい。

「・・・」

 くそ、時計代わりにもならないとは、本当に役に立たない神よね・・・。


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