カメカミ幸福論
指先でぽりぽりと鼻の頭をかいて、私はまた不機嫌な顔になった。
ずっと居られると鬱陶しいが、常に一緒にいた者が急に消えるとそれはそれで腹が立つものだ。なんというか、予定が狂うというか。
「まったく・・・何なのよ」
ま、おじいちゃんの部屋かどこかにいるでしょ。そう考えて、私はもう一度布団に横になる。
それから、いきなり喜びが湧き上がったのを感じた。
ぐぐーっと。私はタオルケットの中で体を縮ませて声にならない叫び声を上げる。
だってだって、よく考えたら久しぶりの一人時間ではないか!ここ、2度寝するべきところでしょ。
ダンはもしかしたら、また兄貴の雑誌を盗み読みしにいってるのかも―――――――――・・・
見張り役というか背後霊というかの存在がいないこと、それはつまり完全なる自由なのだ、という事にようやく気がついた私は、さっきとはうってかわっての上機嫌になってタオルケットを被ったのだった。
「・・・ああ、嬉しい・・・」
この時の2度寝は、心底幸せだったと、今でも思う。