カメカミ幸福論



「――――――何?」


 そう零した自分の声で目が覚めた。

 パチッと開いた両目に飛び込んでくる、いつもの自分のアパートの天井。あたしは寝転んで、呼吸を弾ませながらそれをじっと見ていた。

 動悸も酷い。ドクドクドクと心臓が早鐘のように打つのを耳の中で聞きながら、しばらくそのままで寝転んでいた。

 ・・・あの男だった。

 夢の中に、あの男が出てきた。

 帰り道。会社から出て、いつものコースでアパートへと戻る途中。あの公園を通った。いつもと違った雰囲気。誰も通りかからない。空は夕暮れ。そして、空から・・・あの男が降りてきた・・・。

 それであたしは――――――――――――

「・・・あれ?」

 あたしは、気を・・・失ったんではないのかな?

 バチバチと激しく瞬きをして、それからゆっくりと深呼吸をした。よしよし、落ち着け。確か、腰が抜けてしまって。確か、そのまま恐ろしさで目がまわって・・・。

「そうそう、倒れたんだよ。全く面倒くさい女だな、あんた」

「――――――あ?」

 反射的にガバっと飛び起きた。

 私のボロイアパートの、それなりに居心地の良い6畳の部屋の中、真ん中に寝ているらしい私と・・・あの男(こっちは座っている)。


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