カメカミ幸福論
食堂前は混雑していて、食券を買うのに並ぶ必要があった。私と美紀ちゃんはその列に加わりながら進んでいく。
「同じ年なんだ~。彼氏でなく婚約者ってところがやっぱり驚きだけど・・・」
私がそう呟くと、彼女はにんまりと笑った。
「亀山さんは本当に人のことも気にしませんね?ここは大体皆、根掘り葉掘り聞くところだと思うんですけど。彼はいくつ?どこで知り合ったの?何で婚約なの?とかね」
「・・・へえ」
そ、そうなの?私は肩を竦めた。だって、興味がないんだし。
「だから自分から言いますけど、相手はうちの父の親友の息子さんなんです。親同士の馬鹿げた約束だったんで、本人達は全然そのつもりもなかったんですけどね、まあ、近くに住んでて幼馴染でもあるから気心も知れてるし。いいかって、そのままになってるんです」
「親同士の約束?ってどういうこと?」
そう聞くと、美紀ちゃんはにやりとした。食いつきましたねって言ってるような顔だ。
「俺らいつか家族になりたいなー、ってまだ学生だった父たちが約束したんだそうですよ。で、子供らを結婚させりゃあ家族だなって思ったんだそうです。丁度同じ年にどちらの家にも赤ん坊が生まれて、しかも性別が違ったんで」
バカみたいでしょ?そう、美紀ちゃんは苦笑しながらそう話す。私は心の中で「へー」ボタンを連打しながら聞いていた。